「ル・ボア」は「ラ・トゥルトゥガ」の2階にある。店の前に出ているメニューの「岩泉短角牛のハンバーグ」という文字が飛び込んでくる。
階段を上がった店内は、薄いベージュで統一され、ウッディーな落ち着いた雰囲気。
まさにLe Bois=木、林という店名に ぴったりのインテリア。

「岩泉短角牛のハンバーグ」はランチの人気メニューで、お昼時にはこれを目当てに遠くから出かけてくるOLもいるとか・・
ファストフードのものとはまったく違う品格とおいしさだ。表面がパリパリ、中がサクサクの小ぶりの香ばしいパンに粗引きの短角牛と玉ねぎの分厚いハンバーガーが抜群のハーモニーを醸し出す。噛むと短角牛のうまみがジワーッと口中に広がる。文句の無いおいしさだ。プレートにはポテトの粒マスタード和えと、いろどり豊かな野菜のピクルスが添えられていて、ハンバーグとの取り合わせも抜群だ。

デザートの「菩提樹のハチミツケーキ」 には、盛岡の藤原養蜂場のハチミツが 使われていて、しっとりとほのかに甘くやさしい味わい。

夜のメニューの「短角牛のロースト、安比のキノコ添え」は滋味溢れる一品で、レアーにローストされた鮮やかな赤味に思わずノドがなる。肉を噛むと柔らかく、肉の質感を堪能させる食感とともに、牛のうまみが口中に広がり溶けていく。霜降り肉では絶対味わえない「This is beef!」の旨さが脳天を直撃する。安比産の舞茸は、独特のシャキっとした食感と香りで絶妙のコンビネーション。まさに北上山地の高原を吹き抜ける爽やかな緑の風がプレートから立ち上ってくるような逸品!

16歳でこの道に入ったという萬谷さんは、バルセロナの領事館やエクアドルの日本大使館などで修行した後、帰国。大阪・西区の「ラ・トゥルトゥーガ」を経て、12年前に現在地に同名の店を出すとともに、気軽にランチやワインを楽しんでもらおうと2階に 「ル・ボア」をオープンした。
萬谷さんと岩泉短角牛との出会いは、5年前食材を求めて岩手に行き、岩泉の牧場を訪れた時。牛たちは驚いた様子もなく、のんびりと草を食んでいた。こんな大自然の中で育った牛ならきっと美味いに違いないと思ったという。短角牛の赤身は鉄分を多く含み旨味が凝縮されていて、やわらかく、食べた後脂分が口に残らないのが特徴だと萬谷さんは惚れ込んでいる。

いわて短角牛とは

「夏山冬里方式」と呼ばれる飼育方法で育てられている。春から秋までの期間は、岩手の自然の雄大な牧草地で悠々と牧草を食べ放牧される自然のままに育った牛だ。
冬になると里に戻り飼育農家の愛情を受けて牛舎で過ごす。適度な運動のおかげで肉質が締まり、低脂肪で旨みのある赤味肉が特徴。飼育頭数が限られており、「幻の牛」といわれる所以。 主な生産地は、久慈市、岩泉町、川井村、八幡平市、盛岡市、二戸市など。
岩泉町は、東京23区に横浜市を加えた広さがあり、本州一広大な町。北上山地から三陸海岸までの深い山並みを持ち、「龍泉洞」「安家洞」などの鍾乳洞が有名。岩泉短角牛は、北上山地の高原に広がる大草原に放牧され、のんびりと育つ。有名ブランド牛のような霜降りの美味しさとは違い、赤味肉の旨さが凝縮された深い味わいが特徴で、噛めば噛むほど肉の旨みが広がる。


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萬谷さんは岩手食材の強力な応援団で、厳しいプロのコメントは示唆に富んでいる。良い物はドンドン使いたいという。ただ良質な食材があっても、ルートがなく、食材を地元で食べられる施設も少ないのは残念だと話してくれた。岩手の食材、岩手の魅力について熱く語る萬谷さんの柔和な表情がこの時ばかりは一瞬厳しくなった。